小舎人童の源氏物語日記

源氏物語を広めています。

桐壺・其の三 すれ違う愛

すれ違う愛

 

さて、物語に戻ります。

 

後宮あるあるですが、他のたくさんの妃たちは

一斉に桐壺更衣を目の敵にします。

それぞれが実家の命運を背負って入内しており、

女性たちは皆チャンスを狙って必死なわけですから、

当たり前です。

 

彼女たちのほとんどは、普段から仲が良いわけはありませんが、

ここは同じ敵が出来たので、

通路に当たる廊下の両端の部屋の女性が、

同時に通せんぼして桐壺更衣を閉じ込めてしまったり、

廊下にうん〇まで撒いて着物の裾が汚れるようにしたり、

様々な嫌がらせをします。

 

それによって、桐壺更衣はひどく体調を崩していき、

帝の子である光源氏を産んだ後、

程なくして亡くなってしまいます。

 

宮中では血や死といった穢れは禁忌のため、

出産の際や、重病になって死の淵をさまようような場合も、

万が一亡くなる可能性がある場合は退出しなければなりません。

そのため、重症化して息も絶え絶えな桐壺更衣は、

帝が泣いて引き留めても許されず、実家に退出し、

そこで息を引き取りました。

 

帝は深い悲しみに沈み、更衣の実家に使いをやります。

その時、桐壺更衣の実家には、老いた更衣の母が、

生まれて間もない孫の光源氏を抱えて、悲しみにくれていました。

 

母君は、帝の勅使である靫負命婦(ゆげいのみょうぶ)

(母君とは顔見知りの女性でもある)に、

涙ながらに心の内を伝えます。

「亡き娘を思う親心の闇のほんの一端だけ、

あなたに打ち明けたいので、

公使としてではなく友人として聞いてください。

 

亡き娘は、生まれた時から私たち夫婦の希望の種でした。

夫が臨終の際に、

「この子の宮仕えだけは、何としてでも実現してくれ。

私が亡くなったからと

不本意に志を捨てるようなことはあってはならぬ。」

と繰り返し言い残したので、

しっかりとした後ろ盾がないのに

宮仕えなどには出さぬがましと知りながらも、

遺言にそむけずに出仕させたのです。

帝の過分なご寵愛に、自身が釣り合わない事を恥ながら、

人並みに扱われない中、

周りの皆様とは小さくなってお付き合いしていたようですが、

人様の妬み嫉みが深く積もって、

心が休まる事のない日々が多くなり、

ついにあのように尋常でない体になって

天寿を全うすることなく、

こんなことになってしまいました。

畏れ多い帝のご寵愛がかえって

つい恨めしく存ぜられるのでございます。

このような発言も、子ゆえに何も見えなくなっている

親心からとお察しください、、、。」

そう言って号泣する母君。

不敬を承知でも感情が抑えられません。

 

それを聞いた靫負命婦は、

「帝も同じお気持ちですよ。

『自分でも周囲を驚かせるほどに一途に愛おしくてならなかった。

今にして思えば、

このように長くは続かない運命だったからなのかと

切ない気持ちになる。

自分としては、他人の気持ちを損ねるようなことは

していないと思っているが、

更衣の存在ゆえに受けずとも好い恨みを買い、

あげくこうして後に残されて、どうにも気持ちの整理がつかず、

ますますみっともない愚か者になってしまったのは、

どのような前世からの因縁だったのか知りたく思う。』

と何度も仰られて、泣いてばかりいらっしゃいます。」

と伝え、泣きながら尽きなく話すも、

今夜中に帝にご報告を、と、帰参するのでした。



、、、ここまで読んで、あれれー?なんかおかしいなー。

と、思ったそこのアナタ!

アナタの感覚はすごく正しいので安心してください!

何がおかしいのか、次回解説していきます!